青森県むつ市
青森県、下北半島に計画中の特別養護老人ホーム。40年ほど前に建てられた桜木園という名の多床型老人ホームの建替計画である。
日本が直面している超高齢化社会における福祉体制の課題に対しては、介護職員の労働環境の改善が急務である。介護保険法によって定められる報酬基準に従う限り、特別養護老人ホームの日々の運営にかけられる職員数は必然的にある範囲を越えることはない。ユニット型の老人ホームでは、昼間は1ユニット(=10人の入居者)に対して一人+αの職員、夜間は2ユニットを1人の介護職員でお世話をすることになる。夜間においては、鳴り続けるナースコールへの対応に、たった1人で対応し続けるのが現状である。
夜勤職員の動線を考えると、2ユニットがスタッフステーションによってつながっているのが良い。
90度・180度でつなげると、心理的にやはり遠いので、少し緩やかな角度とする。
さらに隣接する別の2ユニットへの夜間の応援を考えると、2ユニットx2のセットが放射状に接しているのが良い。また、日々の介護動線の中で最も労力のかかる特別浴室への移動を同フロアで済ませるために、特別浴室の入ったボリュームを最短距離でつなげる。
結果として導かれた、放射状に広がる5つのボリュームレイアウト=5弁の花びらは日本を代表する「桜」の花びらで、この施設の持つ「桜木園」という名を受け継いでいる。
職員にとって動きやすい環境を整えることをきっかけに、一見強い構成の中に豊かな空間を埋め込むことによって、入居者の幸せな暮らしを彩る建築である。
白川直行アトリエとの共同設計。