東京都国分寺市
新宿から中央線で約30分、若い世代にも人気の住宅地である東京都国分寺市の駅近くに建つ集合住宅。
周辺環境との「距離」を保つことをテーマに、日本の住宅地に違和感なき異物として屹立するカラーコンクリートの塊、室内に折れ曲がった壁が作り出す光だけが滑り込むアルコーブによって、どこか時間や場所の現実から解放された、どこにも属さない空間を生み出すことを意図した。
いつからか、集合する住まいは「ひらくもの」になったらしい。住まいをひらき、暮らしをひらき、共有スペースを設けて住民同士をつなげながら、街や自然やコミュニティといった周辺環境とダイレクトに積極的につながる空間が作られ続けている。しかし、孤独だって豊かである。群れてあることが都市の一側面であることは間違いないにせよ、それは孤独であることができるというもう一つの側面と一体となって初めて獲得される豊かさである。
どんな小さなワンルームマンションであっても、住まいが個人のプライベートスペースの最後の砦だとするならば、都市から自然から距離を取り、ほのかなつながりだけを予感させる、奥行きのある場所を用意しておきたい。この建築は、逃げ場のない日本の住まいのオルタナティブである。