雲仙市, 長崎
日本を代表するホテルブランドである星野リゾートによる長崎県、雲仙に建つ「界」シリーズの計画である。
日本の温泉地の中には、地面からの火山ガス噴出による草木の生えない場所があり、その恐ろしい姿から古くより「地獄」と呼ばれている。計画地は、その地方でも最も大きな「地獄」に隣接して位置し、すべての客室から雄大な地獄の風景を望むように建築は配置された。
国立公園の中に位置し、また古くから栄えた和洋折衷のリゾートエリアとして文化財保護法による制限地区の中にあって、外壁は白、屋根は赤茶色の勾配屋根に限定されるという厳密な条件のもと、建築は、地獄のもたらすゆらゆらとした風景の一部となるようデザインされた。微細な異なったパターンをもつパネルを組み合わせることで、白い大きな外壁面の印象にゆらぎを与え、存在感を持ちながら風景にすべりこむ様相を獲得できるよう意図した。
地獄と建物の間には大きな水景を設けることで、訪れる人のランドスケープは、ロビーへのアプロ―チ、温泉の湯小屋への動線、露天風呂、それぞれ異なった特徴を持つようにし、滞在時間の中でストーリー性のある体験を得ることができる。
総合監修および内装はSUPERPOTATOのデザインによる。現地の歴史より発想された、和・洋・中それぞれのスタイルが混在した、ここにしかないデザインが目指されている。