北海道小樽市
小樽港の中でも最も古い歴史を持つ第3号ふ頭の基部に計画される、遊覧船の発着場を兼ねた水上カフェのプロジェクトである。
現在の小樽は有名な運河沿いににぎわう観光地が続くものの、駅からつながる市民の街と港が分断される構造を持つ。
「運河を越えて、港(みなと)を巷(ちまた)に」を合言葉に、 物流拠点としての役割を終えつつある港(みなと)を、市民の巷(ちまた)として取り戻すようにプロジェクトが始まった。
北運河、色内ふ頭からかつて延びていた桟橋、旧税関跡地、遠く石狩湾を望み、背景には天狗岳を望む。ここは、小樽の人々の原風景の交差点である。
建築は、それらの記憶と風景をゆるやかに意識づけるように考えた。小さな建築に最大限の方向性を埋め込むように、記憶と風景の羅針盤のような構成である。
少しずつレベルの違う床が角度を変えながら積層する。それぞれの床をぐるぐると巡ることで、小さな建築に最大限の距離を内包し、違う場所の体験を最大化する。何度訪れてもその都度新しい発見があるような、人々の動きを誘い飽きさせないしかけである。
SDレビュー2015入賞。福島慶介(N合同会社)によるプロデュースプロジェクト。