
Abu Dhabi, UAE
産業廃棄物は建築の未来になり得るか?
waiwaiは2021年にこの問いを初めて探求した。UAEにおける海水の淡水化事業により発生する廃水の塩水(ブライン)を基にしたセメントで作られた構造物「Wetland」はその成果であり、ヴェネツィア・ビエンナーレのUAEナショナル・パビリオンで発表され、最高賞である金獅子賞を受賞した。
「Barzakh」では、産業廃棄物を建築の未来として捉える試みをさらに進めた。地球温暖化や急速に拡大する都市に対応する中で、建築家には持続可能な解決策を模索する責任がある。「Barzakh」は、プラスチック、ヤシ繊維、そして塩水(ブライン)から成る構造材によって作られたパビリオンである。これら3つの素材は、UAEの地域環境に根ざし、私たちが直面する課題に対応するために選ばれた。
巨大なインフラ開発に起因するプラスチックの大量使用は高いCO2排出量を伴う。ヤシ繊維は自然環境に豊富に存在し、この地域の伝統建築でも何世紀にもわたり使われてきたが、同時にココナツオイルの消費に伴い、用途の限られる繊維部分は大量の廃棄物となった。そして湾岸エリアの多くの国と同様、UAEも飲料水の供給に海水淡水化に依存しており、大規模な淡水化によって生じる塩水(ブライン)は海に戻されることが多く、海洋生態系に悪影響を及ぼしている。
このプロジェクトは、私たちが今いる環境を改めて見つめ直し、グローバルな問題に地域ごとにどう応答するか、そういった思考態度を促すためにデザインされた。waiwaiは、身近にある素材や社会におけるサイクルを受け入れ再構築することで、新たな地域性=「未来のヴァナキュラー」を築こうという提案を続けている。