北海道
北海道小樽市、旧くはニシン漁で賑わった港の基部に建つ観光情報センターおよび物販店舗の複合施設。
小樽市は近代以降、国の重要港湾の一つであった港を物流の中心として栄えたが、その物流拠点としての役目が変化する中で、『港を巷(ちまた)に』を合言葉に、港沿いをあらためて市民のための居場所として再整備する再開発計画が10年以上前より始まっている。その起爆剤となるべく計画された第一弾のプロジェクトである。
再興する港の「シンボル」となることが求められたこのプロジェクトで、閑散とした物流拠点のシンボルとは、場所に命を吹き込むのは、何をおいても人の姿であると考えた。
建築は、海の中のサンゴ礁が魚を惹きつけるように、海藻の隙間に魚が吸い込まれるように、透明な空間に孔の開いた壁柱が林立する。壁柱は、港が発展していく方向に向けて45度の角度を持って、屋根のラインを越えて配されることで、動きが生まれ、建築の境界を越えて場が広がる。屋上は全面デッキとなり、公園のような場所となる。いずれ港に人が戻り巷(ちまた)となる、依り代としての建築の提案である。